オルタナティブスクールという言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、具体的にどのような施設でどのような教育を行っているのでしょうか?
オルタナティブスクールの「オルタナティブ」とは「代替」や「選択肢」という意味です。この名前の通り、オルタナティブスクールは、従来の学校教育に対する新しい選択肢を提供する学校です。
不登校の子どもや従来の教育システムに馴染めない子どもたちにとって有力な選択肢となることが多いですが、そのメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。
本記事では、オルタナティブスクールの特徴を詳しく解説し、選ぶ前に知っておくべきポイントをまとめました。
- オルタナティブスクールの概要
- オルタナティブスクールのメリットとデメリット
- 代表的なオルタナティブスクールの教育内容(モンテッソーリ、シュタイナーなど)
わが子にとってふさわしい選択肢を選ぶためにも、まずはオルタナティブスクールを知るところから始めていきましょう!
オルタナティブスクールとは?
先述の通り、オルタナティブスクールとは、従来の教育カリキュラムや方法に対する代替(=オルタナティブ)として提供される学校です。
学校とはいえ、学校法人として運営しているところから、NPO法人など小規模に運営しているところまで様々存在しています。
オルタナティブスクールでは一般的な教育システムとは異なる独自のアプローチを採用しており、子どもたち一人ひとりの個性や興味、学びのスタイルに合わせた教育を行っているのが特徴。
教育哲学や方法論は学校によって異なり、モンテッソーリ、シュタイナー、フリースクールなど、さまざまなタイプがあります。
オルタナティブスクールのメリット
メリットとしては、以下が挙げられます。
- 柔軟なカリキュラム
- 少人数制、異年齢交流
- 多様な価値観と文化の理解
- 一般校に馴染めない子どもの居場所
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【メリット①】柔軟なカリキュラム
一般的な公立・私立学校では、文部科学省の定めた学習指導要領に沿ったカリキュラムを定められた時間行うことが義務付けられており、どの学校もその基準の下、運営されています。
一方でオルタナティブスクールは国家基準に縛られず、独自のカリキュラムを構築しています。
従来の日本の教育では得られない体験や、新たな視点で学問を学ぶ機会が得られるなど、子どもの成長の方向性に大きな意味を持つことになるでしょう。
【メリット②】少人数制、異年齢交流
多くのオルタナティブスクールは少人数制であり、子どもひとりに対して先生が手厚く対応できます。
また少人数だからこそ年齢の異なる子どもが一緒に学んだり交流する機会が多く、同年齢同士では得られないコミュニケーション能力(年上から新たな視点を学ぶ・年下をサポートする力など)が鍛えられます。
【メリット③】多様な価値観と文化の理解
オルタナティブスクールはもともと欧米発祥であることがほとんどであるため、多様性を尊重する教育が多く見受けられます。
異なる背景や価値観を持つ子どもたちが共に学ぶことで、広い視野と共感力が育まれます。
学問だけでなく子どもの心身の健康や社会性の発達に重点を置いているところも多く、芸術、スポーツ、コミュニケーションスキルなど、幅広い分野での学びが奨励されてます。
【メリット④】一般校に馴染めない子どもの新たな居場所になる
一般の学校の授業スタイルやテスト、行事などが合わない子というのは一定数います。
発達障害などの診断があったり突出した個性や才能がある子にとっては、一般校の規律に無理に当てはめられるよりもその子に合うオルタナティブスクールを見つけることで、自分らしさを失わず新たな学びの場、居場所を手に入れることが期待できます。
オルタナティブスクールのデメリット
メリットを理解したところで、デメリットもしっかり知っておきましょう。
- 学校法人以外は、公立校に籍を置くことになる
- 高校以上の学校に値する施設が少ない
- 公立校よりも費用がかかる
- 学習進度のばらつき
こちらも詳しく解説していきます。
【デメリット①】学校法人以外は、公立校に籍を置くことになる
学校法人、もしくはそれに準ずるものとして認可されていないオルタナティブスクールでは、多くが公立の小中学校に籍だけ置き、事実上不登校扱いでオルタナティブスクールへ通う方式がとられます。
義務教育である小中学校では卒業自体に問題は発生しません(卒業先はオルタナティブスクールではなく公立校になる)が、例えば高校受験を考慮した際に、この公立校欠席扱いとなってしまう点は現状一般の高校受験に大きな影響を与えてしまうと言わざるを得ません。
ただ、令和元年には文部科学省より「出席扱い制度」というものが発表され、諸条件をクリアすると学校以外での活動を出席として認めてもらえるため、事前にそうしたシステムを取り入れているか等確認しておきましょう。
▼「出席扱い制度」についてはこちらの記事をご参照ください▼
【デメリット②】高校以上の学校に値する施設が少ない
多くのオルタナティブスクールは小学生~中学生対象で、高校進学までできるところが現状限られています。
そのため、高校から一般の公立もしくは私立高校(通信制など含む)へ進学するとなった場合、これまでオルタナティブスクールの環境で育ってきた子どもにとっては違和感を感じたり新たな環境に馴染みにくいという心配の声もあがります。
これは私個人の見解ですが、オルタナティブスクールで主体性・自主性・創造性など育んできた強みは、新たな環境でも自分なりに嚙み砕き自分に合わせた過ごし方を見出す力になっているのではないかとも思うのです。
子どもたちは高校に限らず、社会に出てからも新たな環境に飛び込み、様々な壁にぶつかることでしょう。
そうした壁にぶつかったとき、自分なりの方法で乗り越える力を小学校~中学校で養ってあげること(それがオルタナティブスクールでもそうでなくとも)が、その後どんな環境でも人生を楽しめる人になるのだと思っています。
つまり、「高校以降のことはまたその時考える、それまでは子どもが自分の力で人生を切り開いていく力を十分に養ってあげることに注力する」という考え方も一つあるのではないでしょうか、という提案です。
【デメリット③】公立校よりも費用がかかる
オルタナティブスクールは学校法人として運営されているところはごく少数で、ほとんどがNPO法人や一般財団法人として運営されています。
そのため入学金や学費が公立校に通うより高くなることがあります。
学費などの料金体系は施設によって様々であるため、ホームページや資料請求、学校見学などで情報を集めましょう。
【デメリット④】学習進度のばらつき
柔軟なカリキュラムはメリットである一方で、学習進度にばらつきが出ることがあります。
それぞれのオルタナティブスクールはそれぞれの方針・理念・思想を掲げ、独自の方法で子どもの育成を図っていくため、一般の学校の学習進度とは良くも悪くも差はつきます。
オルタナティブスクールに入学したものの途中で一般校に戻る/転校する場合には、そのギャップをなるべく縮める必要が出てくるかもしれません。
教育内容
オルタナティブスクールの教育内容は多岐にわたります。以下に代表的な教育スタイルとその内容を紹介します。
モンテッソーリ教育
- 特徴: 子どもが自発的に学び、発見することを奨励する。環境が重要であり、教室には自由に使える教材が整えられています。
- 教育内容: 感覚教育、実生活の活動、言語、数学、文化(地理、歴史、科学)など。子どもの発達段階に応じた活動が提供されます。
シュタイナー教育(ウォルドルフ教育)
- 特徴: 子どもの全人的発達(学問だけでなく、感情や意志の育成などバランスの取れた成長)を目指します。芸術、音楽、手仕事がカリキュラムの重要な部分を占めます。
- 教育内容: リズムを重視した日課、手仕事や農作業、演劇や音楽、学問的な科目(後の学年で段階的に導入)など。創造力と社会的スキルの育成に重点が置かれます。
フリースクール
- 特徴: 学生自身が学びを主導する民主的な学校。生徒と教師が対等な立場で運営に関わります。
- 教育内容: 固定カリキュラムがなく、子どもたちが興味のあることを学びます。コミュニティ活動やプロジェクトベースの学習が中心。
サドベリー学校
- 特徴: 自由と責任を基盤にした学校。全ての生徒が学校運営に参加し、自己決定が尊重されます。
- 教育内容: 固定の授業はなく、生徒は自分の興味に基づいて活動します。自己主導型のプロジェクト、遊び、討論などが行われます。
まとめ
オルタナティブスクールは従来の教育システムに代わる新しい学びの選択肢を提供する学校です。個々の子どものニーズに合わせた柔軟な教育を提供することで、多くのメリットを持っています。
一方で、費用の高さや学習進度のばらつき、在籍や出席、進学の問題などのデメリットも存在します。
オルタナティブスクールを検討する際にはこれらのメリットとデメリットを十分に理解し、子どもにとって最適な学びの場を見つけるための参考にしていただければ幸いです。
従来の学校に馴染めない子どもや自主性や創造性を育みたいご家庭は、一度オルタナティブスクールを検討してみることは視野を広げるためにも無駄ではないと思います。
最終的な決定は、お子さんの個性や家族の価値観に基づいて慎重に行うようにしましょう。
それでは!