中学生の不登校は近年増加し続けていますが、そんな登校に悩む中学生とその親御さんの最も大きな不安点のひとつが、進路です。
- 「中卒では就職しても苦労が多そう」
- 「とはいえ、普通の高校に進学するにはハードルが高い気がする」
- 「不登校生の進路、どんな選択肢を持てるの?」
本記事では、上記のような漠然とした不安「不登校生の進路」について深堀りし、選択肢をご紹介します。
- 高校(全日制・定時制・通信制)
- 高等専門学校
- 高等専修学校
- 留学
- 高卒認定試験
- 就職
1.【不登校生の進路】日本の高校
中学3年間不登校でも、日本の高校へ進学することは可能です。
日本の高校は大きく3種類に分かれます。
- 全日制高校
- 定時制高校
- 通信制高校
各学校の授業料については以下の表を参考にしてみてください。
授業料 | 全日制高校 | 定時制高校 | 通信制高校 |
公立 | 12万円/年 | 3万円/年 | 1万円/年 |
私立 | 40万円/年 | 35万円/年 | 18万円/年 |
不登校で内申点が乏しいと仮定した場合、全日制高校は学科試験(3~5教科)が必須になるため、学力が小学校6年生で止まってしまっている、今から勉強を頑張るエネルギーはない、といった場合には合格が難しくなりがちです。
定時制高校も入学試験では学科試験が課されるものの、実際の定時制高校合格率は人気校を除けばほぼ100%というデータもあり、入学は難しくないでしょう。
ただ全日制も定時制も時間などは異なるものの、「毎日通学」という点は同じです。この「毎日通学」が不登校生活が長い生徒さんにとって大きな壁となる場合もありますが、友達と顔を合わせて話をしたり、部活や行事に参加する楽しみもあります。
一方で通信制高校は毎日登校ということはほとんどなく、受験内容も多くが作文と面接のみで非常に入りやすい環境ではあります。
勉強面や毎日の通学に不安がある生徒さんは、通信制高校を選ばれることが多いです。
順番に解説します。
全日制高校
一般的に「高校」と言われているのがこの全日制高校です。
全日制高校では、平日昼間6時間程度の授業を毎日(土日祝・夏休みや年末年始除く)受けます。
修業年限は3年間と定められ、入学時期は原則4月、転入・編入は学期末や年度末に限られます。
定時制高校
定時制高校も公立と私立があり、受験科目や入学時期などは全日制とほぼ同一です。
全日制との違いは、1日の授業時間と必要年数です。
定時制高校の授業時間帯は昼間・夜間・3部制があります。
いずれかの時間帯で1日4時間程度の授業を4年間受けることで、卒業することができます。
1日の授業時間が短い分、卒業までの必要年数が全日制に比べて1年多くなります。
不登校や中退を経験した人、経済的な理由で学校に通えず昼間に学費を稼ぐ人、特別な支援が必要な人など、様々な背景を持つ生徒さんが定時制高校には通われています。
通信制高校
全日制、定時制高校は似通った部分もありましたが、通信制高校はまた別物というイメージです。
全日制高校・定時制高校が「毎日登校」必須であるという点と大きく異なるのが、通信制高校です。
通信制高校では週に何回登校するかを自分で選択できたり、学校によっては年に数回の登校でOKの場合も。
(逆に週5日登校のコースを設けている通信制高校もあります。)
登校回数が限られている中で高校卒業資格を得られるので、「毎日登校」が通学のネックになっている生徒さんに多く選ばれる選択肢です。
では通信制高校ではどのように単位を取得していくのでしょうか?
→主に以下が単位取得の評価になります。
- レポート:最近はeラーニングで穴埋め問題が多い傾向。
- スクーリング(登校):通常月2回程度登校し、先生に質問をしたり体育や美術の実技を受けたりする。
- テスト:年末に1度「単位認定試験」が行われる。通常レポートなど取り組んでいれば解ける程度に難易度は低くなっている
最短3年間で卒業、学校の規定内であれば10年かけて卒業しても大丈夫です。
2.高校以外の学校
高校以外にも、高卒資格を取得できる学校があります。
それが、
- 高等専門学校
- 高等専修学校
です。
とても似た名称なのでややこしいのですが(笑)、サクッと解説します。
高等専門学校
高等専門学校は実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関です。
文部科学省HPより抜粋
全国に国公私立合わせて58校あり、全体で約6万人の学生が学んでいます。
入学資格は高校と同じく、中学卒業者。
ただ高校との大きな相違点として、卒業まで5年間(商船学科は5年6ヶ月)在籍が必要です。
机上の勉強に限らず、実験や実習が多く設けられています。
学科は学校ごとに異なりますが、大きくは工業系と商船系の学科に分かれます。
<工業系の学科>
機械工学科、電気工学科、電子制御工学科、情報工学科、物質工学科、建築学科、環境都市工学科など。
<商船系の学科>
商船学科
<そのほか>
経営情報学科、情報デザイン学科、コミュニケーション情報学科、国際流通学科などを設置している学校もあります。
卒業生に対する産業界からの評価は非常に高く、製造業を初めとして様々な分野で活躍しています。
多くの高等専門学校には専攻科があり、5年間(商船学科は5年6ヶ月)の本科を卒業後、2年間の専攻科を修了すると独立行政法人大学評価・学位授与機構の審査を経て学士の学位(大学学部と同じ)を得ることができます。
※専攻科への進学のほか、大学に編入学することも可能。
高等専修学校
社会に出てすぐに役立つ実践的な職業教育を行い、いろいろな分野でスペシャリストを養成しています。高等学校と並ぶ正規の後期中等教育機関として、高等学校の枠に収まらない多様な教育を行っています。
現在約490校で約3万8,000人の学生が学んでいます。
文部科学省HPより抜粋
入学資格は高校・高等専門学校と同じく、中学卒業者。
高等専修学校は高校とのダブルスクールも可能という特徴があり、修業年数は1~3年。
3年間で規定の授業時間数など条件を満たせば、大学受験資格を得られます。
学科は学校ごとに異なりますが、
- 医療、介護、福祉
- 商業、ビジネス、情報、経理、簿記
- 理容、美容、和洋裁、ファッション、デジタルデザイン、音楽、外国語
- 調理、製菓・製パン
- 自動車整備、電気・電子、土木・建築、航空工学、CGアニメーション、マルチメディア
など多数の学科が設けられています。
3.【不登校生の進路】留学(海外の中学高校へ進学)
例えば中学3年間不登校だったとしても、不登校に強い留学エージェントなどを通すことで高校留学が叶います。
この「不登校に強い留学エージェント」というのは、海外の高校と強固な信頼関係を気づいているエージェントであれば、高校側から受け入れを許可してもらいやすいという流れがあるためです。
不登校でも受け入れてもらいやすく、卒業もハードルが低めなのがニュージーランドです。
ニュージーランドは基本的に毎日登校し、英語ができなくても前向きにまじめに授業を受けていれば卒業できます。
海外の正規の高校に3年間(編入の場合は2年間)在籍することで、日本の大学の帰国子女枠などで受験が可能になります。
帰国子女枠では(大学によりますが)、主に小論文と面接のみが実施され、学科試験がない場合が多く見られます。
海外の高校にいると日本の歴史や国語などの勉強はできないため、学科試験免除というのはとても心強いのではないでしょうか。
その分IELTSやTOEFLなどの英語検定の実績を積んだり、現地での頑張り(成績や課外活動など)を評価してもらうことでよりレベルの高い大学を目指すこともできます。
早稲田や上智を始め、一般受験では非常に高い偏差値を出している大学でも、帰国子女枠なら日本での勉強に遅れがある不登校生でも合格することは夢ではありません。
4.【不登校生の進路】高等学校卒業程度認定試験
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)は、年2回行われ、対象の科目は9科目あります。
高卒認定試験は高校で不足した科目を補う形で単発(1科目だけなど)受験することも可能です。
合格者は高等学校を卒業した方と同等以上の学力があると認められ、大学受験資格としても認められます。
注意すべきは、高卒認定試験に合格したとしても、学歴は「高卒」とはならないことです。
※18歳未満で高卒認定試験合格したとしても、すぐに大学へ入学できるわけではありません。18歳未満で合格した場合でも、満18歳の誕生日(または年度内に18歳の誕生日を迎える)から高卒認定合格とみなされ、大学受験につながります。
5.【不登校生の進路】就職
中学卒業後に就職することももちろん可能です。
しかし、中卒での就職には様々な壁が生じるのも事実です。
- 求人に「大学卒業・高校卒業」という制限を設けている企業が多いため、希望の求人に応募できず選択肢が狭まる
- 希望の職で必要な資格試験の受験資格が得られない(受験条件が「高卒以上」の場合が多い)
- 基本給や年収が高卒や大卒に比べて低くなる
- 正社員として雇用されにくい
一方で中学卒業後から就職することで、下記の強みもあります。
- 若いエネルギーを売りに体力仕事で重宝される
- 早くに社会に出ることで社会人としての経験を積み、社会の仕組みを知り、起業する人もいる
どうしても早くから働きたい・働かなければならないという場合でもいきなり仕事のみではなく、アルバイトで社会人の練習を行いながら高校に通う、定時制や通信制高校と本職を両立する、といった方法があります。
人生の選択肢を広げるために、焦らずしっかり下調べを行うことが大切です。
まとめ
進路選びは悩ましくもありますが、本人や家庭内で行き詰まったときは外部へ相談に行かれ第3者の目線も取り入れてみるのをお勧めします。
ご相談先は、学校の先生、スクールカウンセラー、家庭教師、不登校支援団体などがあります。
ご相談先に迷われる場合には、ぜひお気軽に当ブログのお問い合わせよりご連絡ください。一人一人にあわせたご相談先機関を不登校専門社会福祉士がピックアップしご紹介いたします(完全無料、忖度なしです)。
それでは!親子が心からの笑顔で過ごすための行動を起こそう!花辺でした。